衛星通信においては、通信需要の増加等を背景に利用可能な周波数資源がひっ迫しており、低軌道衛星コンステレーションの拡大等の影響も相まって周波数に係る国際調整についても長期化・複雑化しています。このような状況の中、国際周波数調整を行うことなく高速・大容量通信が可能な光通信は、今後の衛星通信において重要な役割を果たし得るものとして注目されています。
衛星光通信は、現在は技術的課題が存在することから利用が限定的なものにとどまっていますが、今後、技術的課題が克服されるに伴い実装が進み、利用が拡大していくことが見込まれます。他方で、現時点では衛星光通信において使用される衛星バス及び光通信端末については、国内外の民間需要を我が国のベンダーが獲得できておらず、継続的にこれらの機器に係る技術を開発し、製造・供給する基盤を構築できているとは言い難い状況です。今後、衛星通信における光通信の重要性が拡大することを見据えると、継続的な開発及び製造・供給が可能な基盤を有しない状態は、将来我が国の衛星通信の自立性に支障を生じさせる可能性があります。 我が国のベンダーが国際競争力を確保し、民間需要を獲得した上で、継続的に技術投資を行い製造・供給する状態を構築するためには、今後の衛星光通信の実装及び利用に当たってどのような衛星バス及び光通信端末が必要とされるかを確認した上で、我が国としてターゲットとすべき市場を見極め、その市場の獲得に向けて必要な措置を講ずる必要があります。この必要な措置は、我が国の主なベンダーの現状と、ターゲットとする市場において求められる競争力の構成要素によって異なり得るものであり、これらを調査した上で我が国として取り組むべき措置を明らかにすることは、我が国の衛星通信にとって重要です。
このため、衛星光通信の普及が見込まれる2030年代以降を見据え、官 ・民双方の国内需要への対応と国外市場におけるシェアの獲得を目指し、衛星光通信において衛星バス及び光通信端末に求められる技術的要件並びに納期や価格等の国際競争力に繋がる要件の調査・検討を行い、その結果を踏まえて今後の技術開発の方向性等を検討するためのフィージビリティスタディを行います。